カーフ、キップ、カウ。5種類の牛革の違いを知れば、革財布の選び方が変わります

※この記事は、姫路市の革製造タンナーと台東区の老舗革工房の協力のもと作成しています。

財布を始めとする革製品に世界で最も広く使われる牛革。

しかし一口に「牛革」と言っても、元となる牛の年齢や性別によって、特徴の異なる5種類の牛革が存在することをご存知でしょうか?


例えば、革製品の説明によく登場するカーフやキップ、カウといった言葉は、全て牛革を指しています。

名前を耳にすることはあっても、それぞれの特徴や製品としての品質の違いは分かりにくいものです。

牛革のことを知らずに革製品を選ぶことは、機種や性能を知らずに、見た目だけでスマートフォンを選ぶようなもの。

結果として、思わぬ買い替えが必要になることもあります。

そこで今回は、革製品の品質に大きく影響を与える5種類の牛革の違いから、最適な革製品を選ぶ方法まで詳しくご説明します。

その内容を理解すれば、牛革製品での失敗を大きく減らすことができます。

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この記事のまとめ

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牛の年齢や性別で牛革の特徴は大きく異なる

わとか 財布 革

私たちが手にする革製品の「革」は、食肉産業の副産物としての「皮」をなめすことでつくられています。

そうしてできる革の品質を大きく左右するのが、元となる牛の年齢や性別です。

例えば、柔らかく繊細な赤ちゃんの肌が、成長するにつれて強くなるように、牛も歳を重ねるほど厚く丈夫な革になります。

つまり、子牛から得られる革(カーフ)は滑らかで柔らかい革質になり、成牛から得られる革(カウやステアなど)はしっかりとした革質になるのです。
※年齢によって革の質が変わるのは豚革や鹿革を含む他の動物の革も同じ。

このように年齢によって特徴を変える牛革は、主に5つの種類に分けられています。

それぞれの特徴を理解した上で革製品を選ぶことで、自分好みのものを見つけることができるようになります。

カーフとは、子牛の革のこと

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カーフとは、子牛からつくられる革のことです。

この革の特徴は、何と言ってもきめ細かさと柔らかさです。

赤ちゃんの肌を思わせるほど滑らかな質感は、触れるたびに心地良さを実感できます。

その一方で、美しいものにはそれ相応のデリケートさも伴います。

カーフは革の繊維が成熟していないため、耐久性に劣ることが多いです。

これは、赤ちゃんの肌が繊細であることを思い浮かべると分かりやすいです。

そのため、カーフの製品を長く愛用するためには、慎重に扱い、適切にお手入れすることが必要です。

さらに、カーフは非常に高価です。

その理由の1つは、子牛の体が小さいために取れる革の面積が限られていること。

そして、繊細な表面を傷つけずに美しく仕上げるために高度な技術と手間が必要であることも挙げられます。


しかし、高い価格とデリケートな特性にも関わらず、カーフの製品を選ぶ人は少なくありません。

なめらかで上品な手触りは、他の革にはない魅力を持っているからです。

そのため、

耐久性よりも質感を優先する方には、カーフでつくられた革製品はおすすめです。

キップとは、若牛の革のこと

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キップとは、若い牛からつくられる革のことです。



人の成長段階でいうと、子供から青年期にかけての時期に相当します。



キップは、子牛の革であるカーフよりも一回り大きな牛から取れるため、幼い頃のきめ細かさと柔らかさを残しながら、カーフよりも丈夫な革になります。

ヨーロッパでつくられる革の場合、キップはカーフに含まれてしまい、独立した種類として扱われないこともあるため注意が必要です。

革製品の説明にカーフと記載されていても、実際にはキップである場合が多いです。

また、カーフほどではないにしても、キップも価格が高くなる傾向があります。



その理由は、カーフと同様に使える革の面積が限られており、革が未成熟で繊細なため加工が難しいことが挙げられます。

きめ細かさを重視しつつも、ある程度の耐久性も求める方には、キップの革製品はおすすめです。

カウとは、メス成牛の革のこと

カウとは、大人のメス牛からつくられる革のことです。

日常的には、「成牛の革」をまとめて指すこともありますが、革製品の分野では特に「メス成牛の革」を指します。


この革は、カーフ(子牛の革)やキップ(若牛の革)と比べると一段と丈夫です。



カーフが小さい子供のような柔らかさを感じさせる革で、キップが成長途中の青年のようなバランスのとれた革とするならば、カウは成熟した大人の力強さを感じさせる革。


例えば、人の場合も、小さい子供の肌は柔らかくてデリケートですが、大人になるにつれて肌は厚く、丈夫になります。



同じように、革も牛の年齢が上がるほど丈夫になります。

また、メス成牛の革であるカウは、去勢していないオス成牛の革に比べて特有のきめ細かさを持っていることが多いです。



人の肌で例えるなら、女性の肌に特有の柔らかさです。


この革質はホルモンバランスの違いが一因で、牛にも性別によってこのような特徴的な違いが見られます。


カーフやキップほどのきめ細かさはないことが多いですが、耐久性を重視する方には、カウでつくられた革製品は魅力的な選択肢となります。

ステアとは、オス成牛の革のこと(去勢あり)

ステアとは、若いうちに去勢した大人のオス牛からつくられる革のことです。

成熟した牛からつくられるため、子牛の革であるカーフや若牛の革であるキップと比べて滑らかさは多少劣りますが、その代わりに高い耐久性を持ちます

また、幼い頃に去勢されていることで男性ホルモンの影響を受けにくくなります。

そのため、去勢していないオス成牛の革(ブル)よりも気性が穏やかになり、粗さの少ない安定した革質になることが多いです。

一方で、メス成牛の革(カウ)も、女性の肌のようなきめ細かさや柔らかさを持っています。

カウとステアの一般的な傾向を比較すると、ステアの方が耐久性がある分、きめ細かさに劣り、カウの方がきめ細かさがある分、耐久性に劣ります。

しかし革製品の素材として見たときに、カウとステアの違いは明確に表れないことも多いです。

実用的には、カウとステアをまとめて、成熟した繊維を持つ耐久性の高い革と捉えておくとよいでしょう。

結論としては、滑らかさよりも、より長く使える耐久性を重視する方には、ステア(またはカウ)でつくられた革製品がおすすめです。

一方で、他の種類の牛革にも言えることですが、一枚一枚の革には個体差があります。

ステアの中には耐久性を保ちながら、カーフやキップに引けを取らないほどのきめ細かさを持つ革も存在するのです。

そのため、革製品を選ぶ際には、一般的な傾向を理解しながらも、実際の革の手触りや風合いを確かめることが大切です。

ブルとは、オス成牛の革のこと(去勢なし)

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ブルとは、去勢していないオスの成牛からつくられる革のことです。



この「去勢していない」という点がブルの特徴を決めるポイント。



去勢しないことで男性ホルモン(テストステロン)のレベルが高くなり、肉体や皮膚が強靭に成長します。



このホルモンは、革の耐久性にも大きく影響し、十分に丈夫なステア(去勢したオス成牛の革)と比べても、ブルはさらに耐久性に優れています。

一方で、去勢によって気性が落ち着いたステアの安定した革質とは対照的に、ブルはワイルドで力強い革質になります。


このワイルドさは凹凸感のある手触りや見た目にも表れ、革の野性味あふれる風合いを楽しむことができます。

プルは

一般的に多くは流通しませんが、きめ細かさよりもワイルドな質感と強靭さを重視する方には、ブルでつくられた革製品は最適な選択です。

まとめ:5種類の牛革の違いを比較

牛革製品を選ぶ上で、革の耐久性や質感、柔らかさは重要な比較ポイントです。


以下に、同じ加工条件において、5種類の牛革の一般的な特性を比較した表を示します。

ブル カウ・ステア キップ カーフ
耐久性 とても高い 高い 中程度 やや繊細
きめ細かさ 粗い 中程度 細かい とても細かい
硬度 硬い 中程度 柔らかい とても柔らかい

※他の加工条件が同じ時の一般的な傾向の比較

一般的な傾向をまとめると、元々の牛の年齢が高くなるほど、きめ細かさが落ちていく代わりに耐久性を増していくと捉えておきましょう。

耐久性は製品の寿命に大きく影響し、経年による変化を支える重要な要素です。

質感は日々手に触れる物としての心地よさを決め、柔らかさは製品の使用感にも影響します。


もちろん、原皮となる牛の年齢だけでなく、加工方法によっても革の性質は大きく変わります。

しかし、年齢による特徴の違いを理解することは、革製品選びの前提として非常に重要なことです。

牛の年齢に注目した革製品の選び方

革製品を選ぶ際には、素材となる革の性質を理解することが重要です。



革の性質は製品の使用感や経年変化、寿命にも直接影響を与えるからです。



特に牛革は、豊富な流通量で革製品市場において最も使われている素材の一つ。



そのため、牛革の性質を知ることは、革製品の購入後に後悔するリスクを減らし、より長く愛用できる製品を選ぶための鍵となります。

手触りのなめらかさを重視するなら年齢の「低さ」を確認する

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手触りの良い革製品は、日々のふとした瞬間に幸福感を感じさせてくれます。

きめ細かく滑らかな手触りを求めるのであれば、注目すべきなのは元となる牛の年齢の低さです。

牛の年齢が若いほど、革の繊維は繊細できめ細かくなります。

そのため、手触りの良さをとことん追求するなら、子牛の革・カーフを使った革製品を選ぶのがおすすめです。



丁寧になめされたカーフの滑らかさは他の追随を許しません。

しかし、滑らかさだけでなく、ある程度の耐久性も求めるなら、若牛の革・キップもおすすめです。

キップは、カーフに比べると滑らかさは少し劣りますが、その分、成長によって繊維の強度が増し、適度な耐久性も持ち合わせているからです。

そのため、とにかく滑らかな手触りを重視する方は、カーフやキップという言葉を目印に革製品を探すのがおすすめです。

もちろん、成牛の革であるステアやカウも、個体によってはカーフやキップに匹敵する滑らかさになることがあります。

そのため、成牛の革で気になった製品がある場合は、実際に手に取ってみることが大切です。

長く愛用できる耐久性を重視するなら年齢の「高さ」を確認する

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気に入った革製品を日々のパートナーとして長く愛用したいと考えるなら、「耐久性」は最も重要な要素の1つです。

この点で見逃せないのが、2つの牛革「カウ」と「ステア」です。

カウは「メスの成牛」からつくられ、ステアは「幼い頃に去勢されたオス成牛」からつくられる革です。



どちらも、元となる牛は落ち着いた気性なので、革質が粗くなりにくく安定的に育ちます。

そして年月を経て成長を遂げた強靭な繊維が、長期間にわたる使用にも耐えうる堅牢さを備えているのが大きな魅力です。

なめらかな手触りを重視する方にはカーフやキップがおすすめですが、安定した革質と、経年変化を長く支える耐久性を重視するなら、カウとステアは特におすすめです。

一方で、さらに高い耐久性とワイルドな質感を求めるならブルが最適です。

ブルは去勢されていないことから、その力強い生命力が反映された、強靭な革質が特徴です。

荒々しい自然の美しさを感じさせる質感があり、長い年月を共にするにはうってつけです。

結論として、日常的に多くの荷物を運ぶバッグや毎日使う財布など、長期間愛用できる丈夫な革製品を選ぶ際には、まずカウ、ステアのどちらかでつくられているかを確認するとよいでしょう。

ブルの製品は多くは流通していませんが、無骨な質感とより高い耐久性を求める方にはおすすめです。

使われている牛革の種類が分からない場合はどうしたら良いのか

一般的な牛革には、カーフ、キップ、カウ、ステア、ブルという異なる特徴を持つ5種類があります。



これらの違いを理解し、自分の用途や好みに合わせて革製品を選ぶことが、満足のいく買い物へとつながります。

しかし、時には牛革の具体的な種類が商品ページに記載されていないことも。

革質の個体差を加味すると、実物を見て正確に5種類を区別することはプロでも容易ではありません。

そのため、商品ページに記載がない場合は、直接ブランドに問い合わせることが確実な方法となります。

「この牛革はステアですか?」「カウですか?」と具体的に質問してみましょう。



高品質な革製品を提供するブランドであれば、使用している革の詳細を把握しており、顧客からの疑問にも丁寧に答えてくれるはずです。

もし店頭でのお買い物なら、販売スタッフに声をかけてみましょう。



彼らはその革がどの種類に属するのか、またその特徴や魅力を知る専門家です。



オンラインでの購入の場合は、お問い合わせフォームやチャットサービスを利用することで、不明点を解消することができます。

このプロセスは、あなたの理想の革製品を見つけるためには非常に重要です。

牛の年齢以外に牛革の質を左右する5つのポイント

牛革の質は牛の年齢や性別に大きく影響されますが、それだけで革質が決まるわけではありません。



自分の好みに合った質の高い革製品を求めるのであれば、以下の5つのポイントにも注目してください。

・革の構造
・なめし方
・染め方
・仕上げ方
・使用部位

耐久性を更に追求するなら「革の構造」に注目

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耐久性をとことん追求するなら、銀面(革の表面層)が削られていない「フルグレインレザー」の牛革製品を選びましょう。

牛革を含む多くの本革は、大きく分けて2つの層から成り立っています。


それは外側にある滑らかな「銀面」と、内側の毛羽立った「床面」です。



銀面は、革の表面を構成する緻密で丈夫な部分で、革の素肌を感じられるとともに、革に強度を支えている部分です。

しかし、人の体にシワや古傷が残るように、牛革にもまた、生きていた時の傷やシワが残ることがあります。



それらを目立たなくするために、多くの革では銀面を削ってしまいます。

削られた表面は滑らかで均一な見た目をもたらしますが、同時に革の耐久性が低下する原因ともなります。

そのため、耐久性を追求するなら、削られていない完全な銀面を持つ「フルグレインレザー」の革製品がおすすめです。

つまり、成牛の革であり、かつフルグレインレザーでもある革は、耐久性がとても高くなります。



また、フルグレインレザーに次いで、少しだけ銀面を削って見た目を整えた「トップグレインレザー」も、削られている量が少なければ耐久性は保たれます。



一方で、銀面が全て削られた「スプリットレザー」は、軽さや柔らかさはありますが、耐久性には劣るので注意が必要です。

※構造で分けられる3種類の本革(フルグレインレザー、トップグレインレザー、スプリットレザー)の違いを理解し、適切に見分けることで革製品で失敗するリスクを大きく減らすことができます。
詳しくは以下の記事で説明しています。

革財布の寿命を左右する3種類の本革

エイジングを重視するなら「なめし方」に注目

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一部の革製品は、使い込むほどに深みが増し、独特の味わいが出る「エイジング」というプロセスを楽しむことができます。



その鍵を握るのが、「皮」を「革」へと変える「なめし」の工程です。


革のなめしに最もよく使われる成分は金属成分の「クロム」と植物成分の「タンニン」の2つです。



これらは、世界中で使用されているなめし剤の9割以上を占めていると言われています。

つまり、世の中の本革の9割以上が、クロムやタンニンでなめされているということです。

タンニンなめしは、その名の通り、植物由来のタンニンを用いた伝統的な方法です。

タンニンでなめされた革は、多くの人がイメージする経年変化(エイジング)を楽しむことができるのが大きな特徴。



使うほどに色が変わり、艶を帯び、革本来の美しさが際立ちます。



しかし、タンニンなめしの革は全体のわずか1割前後で、今では少ない存在です。

一方で、クロムなめしの革は耐久性に優れているのが大きな特徴です。



クロムはタンニンよりも革の繊維と強く結びつくため、革はより強靭になります。


しかし、その丈夫さと引き換えに、タンニンなめしの革のような色や艶の変化はほとんど見られません。



このように、なめしによって革の質は大きく変わるため、革製品を選ぶ時には、なめし方をチェックすることも重要です。

まとめると、

革製品の変化を抑えながら耐久性を重視する場合は、革がクロムのみでなめされているかを確認しましょう。

一方で、アンティーク家具のように時間と共に風合いが豊かになる革製品を楽しみたいなら、革がタンニンでなめされているかを確認すると良いです。


※クロムでなめした後にタンニンで再度なめす「コンビなめし」という方法も存在します。このタイプの革は、クロム由来の耐久性がありながら、タンニン由来の経年変化も楽しむことができるのが特徴です。

革の色合いや経年変化にこだわるなら「染め方」に注目

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色合いは、革製品の魅力の1つ。



そして、長く使うほどにその色が変わるエイジング(経年変化)も、多くの人を魅了する特徴です。



これらの魅力を大きく左右するのが、革の「染め方」です。

革の染め方には主に「染料染め」と「顔料染め」の2種類があります。



染料染めとは、革に色(染料)を染み込ませる方法のこと。

この方法では、染料が革の繊維の奥深くまで浸透するので、自然で深みのある色合いになります。



革の素の表情がそのまま残っているので、使うほどに独特の艶や色の変化を楽しむことができるのが特徴です。



そのため、革製品のエイジングを重視する方には、この染料染めの革でつくられた製品がおすすめです。

一方で顔料染めとは、革の表面に色(顔料)をコーティングする方法のこと。



この方法で染めた革は、均一でビビッドな色合いに仕上がります。

また、革の表面にある傷や汚れを覆ってくれるため、原皮の質にある程度寛容です。

それによってコストが抑えられ、革の染色では最もよく使われる方法です。



新品の時の均一な色を長く保ちたい、または発色の良さを重視したいなら、顔料染めの革で作られた製品がおすすめです。

革製品を選ぶ際には、ただ色の見た目だけでなく、染め方まで確認することで、長く愛用できる製品を見つけることができます。

革の風合いを180度変えてしまう「仕上げ方」に注目

革製品の最終的な風合いを大きく左右するのが、なめしや染色の後に行われる「仕上げ」です。

例えば、ソフトな手触りを好む方には、「ミリング仕上げ」を施した革(ミリングレザー)がおすすめです。


その代表例はイタリアンレザーのミネルバボックス

この革の仕上げでは、大きなドラムで革を空打ち(回し叩いてほぐすこと)します。

こうすることで、革がふっくらと柔らかく仕上がります。

また、革本来の自然な美しさと艶やかな質感を求めるなら、「ワックス仕上げ」の革も良い選択です。

その代表例はブライドルレザー

ブライドルレザーをはじめとするワックスが施された革は、使い込むほどに独特の輝きを増し、深みのある色合いに変わっていきます。

一方で、経年変化を楽しみたい方は、レジン仕上げの革は避けるべきです。

エナメルレザーのように、表面にレジン(樹脂)をコーティングした革は、革の表面が外部と接触することがなくなり、革のエイジングが抑制されるからです。

しかし、表面の樹脂膜が傷や汚れを防いでくれるという利点もあります。

そのため、清潔感を保ちながら、逆に革の変化を少なくしたい方にはおすすめの仕上げです。

革の仕上げには、これら以外にも多種多様な方法が存在します。

それぞれの仕上げが革に異なる魅力を与えるので、その仕上げによって革がどのような特徴を持つのかを確認することが重要です。

革質に妥協しないなら「使用部位」に注目

同じ品番の革製品を手に取って比べるとき、質感の大きな違いに驚かされることがあります。

その秘密は、革の部位にあります。

革製品は、大きな一枚の革を小さなパーツに切り出して作られます。

そして一枚の革の中でも部位によって繊維構造が異なり、どの部位を切り出して製品にするかによって質感が大きく変わるのです。

一般的に、革は主に3つの部位に分けることができます。



まず、革製品に柔らかさを求めるならベリー(お腹周りの部位の革)が適しています。



お腹周りには脂肪が多いことから、革の繊維も緩く、くたっとした柔らかい感触が特徴です。



その柔らかさゆえに耐久性にはやや劣るという側面もありますが、手触りの柔らかさを追求するなら、この部位が使われた製品はおすすめです。

次に、耐久性を重視するならベンズ(背中からお尻周りの部位の革)がおすすめです。



この部位は繊維がしっかりと密接しているため、きめが細かくハリがあり、高い強度を誇ります。



長期間愛用する財布やバッグを選ぶ際には、この部位が使われた製品がおすすめです。

そして、その中間的な特徴を持つのがショルダー(肩周りの部位の革)です。



この部位は前足や首の動きに合わせて適度に繊維がほぐれるため、柔らかさと耐久性のバランスが取れた素材となっています。


しかし、一般的にメーカーは革を無駄にしないために各部位をバランスよく使い分けることが多いです。

そのため、1つの製品に1つの革の部位のみを使うことは珍しいです。

「ベリー→ショルダー→ベンズ」の順で革はきめ細かくなるので、実物を複数比べられる際は、革のきめ細かさに注目してどの部位なのかを大まかに判断するとよいでしょう。